BIMとファシリティマネジメントの統合:建物データとクラウドプラットフォームをつなぐ

建物の引き渡し時には、完成したBIMモデル、詳細な資産情報、さらには最新のファシリティマネジメントシステムまで導入されている場合があります。しかし数年後には、設備の履歴を追跡したり、保守記録を確認したり、最新の資産情報を探したりするために、施設管理担当者が複数のシステムを横断して情報を検索しなければならないケースが少なくありません。BIMモデル自体は残っているものの、建物の日々の運用実態を反映しなくなっているのです。

なぜこのような状況が生じるのでしょうか。また、建設完了後も長期にわたって、BIMを実際の運用に活用できる資産として維持することを妨げている要因は何なのでしょうか。

維持管理BIMと日常的なファシリティ運用の間に生じるギャップ

維持管理BIMモデルは、建物引き渡し時点の状態を正確なデジタルモデルとして再現することを目的として作成されます。そこには、資産、設備の設置場所、仕様、保守要件などに関する有用な情報が含まれています。しかし、建物が運用段階に入ると、施設管理チームの情報管理方法は次第に変化していきます。

日常業務はBIM環境の外で行われる

日々のファシリティマネジメントにおいて、保守担当者がBIMオーサリングツール上で直接作業することはほとんどありません。実際には、CMMS(設備保全管理システム)、プロパティマネジメントシステム、CAFMソリューション、モバイル点検アプリケーションなどの運用プラットフォームを利用して、日常業務を管理しています。

これらのシステムは、作業指示の作成、点検結果の記録、設備の交換、資産状態の更新、保守履歴の管理などに使用されます。3Dモデリングではなく、日常の運用効率を重視して設計されているためです。

その結果、運用データは継続的に更新されていく一方で、その情報がBIMモデルに反映されず、管理プラットフォーム内だけにとどまることが少なくありません。

BIMと運用データの不整合が生じる理由

問題は、BIMモデルが使われなくなることではありません。問題なのは、BIMモデルと運用システムがそれぞれ独立して更新されていくことです。

例えば、定期保守の際に空調機が交換されたとします。交換内容はCMMSに記録され、資産データベースも更新され、保守履歴も登録されます。しかし、維持管理BIMモデル内の該当情報は更新されないまま残る可能性があります。

設備が移設された場合や、資産が更新された場合、あるいはBIMモデルを更新することなく点検記録だけが追加された場合にも、同様の不整合が発生します。

こうした小さな不整合は、時間の経過とともに積み重なっていきます。その結果、BIMモデル自体は存在していても、建物や設備の現在の状態を正確に表すものではなくなってしまいます。

このギャップが重要な理由

BIMモデルが古い状態のままでは、ファシリティマネジメントにおいて発揮できる価値が大きく制限されます。保守作業を行う前に、エンジニアが複数のシステムを確認して情報を照合しなければならなくなる一方、建物所有者にとっても、BIMモデルを信頼できる資産情報源として利用することが難しくなります。

本来、信頼できる一元的な情報源として機能すべきBIMが、分断された他のデータベースと並ぶ単なる参照情報の一つになってしまうのです。

このように、維持管理BIMと日常的なファシリティ運用との間で拡大していく情報の分断は、BIMが持つライフサイクル全体での価値を十分に引き出すうえで、大きな課題の一つです。

このギャップを解消するためには、単にデジタルモデルを維持するだけでは不十分です。運用データが時間とともに変化していく中でも、建物情報が継続的に同期される仕組みを確保する必要があります。

BIMとファシリティマネジメントの統合によって、実際に何がつながるのか

BIMとファシリティマネジメントの統合というと、単にBIMモデルをファシリティマネジメントシステムへ接続することだと考える人も少なくありません。しかし実際には、情報を個々のアプリケーション内に分散・孤立させるのではなく、複数の運用プラットフォーム間で情報がシームレスに流れる、相互に連携するデジタルエコシステムを構築することを意味します。

維持管理BIMは情報エコシステムの一部にすぎない

維持管理BIMモデルは、建物を視覚的かつ構造化された形で表現する役割を果たしますが、運用情報を管理する唯一の情報源ではありません。建物のライフサイクルを通じて、さまざまなシステムがそれぞれ異なる種類のデータを管理しています。

例えば、以下のようなものがあります。

  • 維持管理BIM:建物の3D形状、資産の位置、設備属性、技術仕様を管理します。
  • 資産データベース:設備台帳、資産ID、保証情報、ライフサイクル記録を管理します。
  • CMMS(コンピュータ化保全管理システム):作業指示、予防保全スケジュール、保守履歴、修理作業を管理します。
  • プロパティマネジメントシステム:テナント情報、賃貸借管理、スペース配分、運用ワークフローを管理します。
  • IoTセンサー:設備の稼働状態、エネルギー消費量、温度、環境条件などのリアルタイムデータを継続的に生成します。
  • 文書管理システム:マニュアル、図面、点検報告書、証明書、コンプライアンス関連文書を保管します。
  • ERPシステム:建物資産に関連する調達、予備品、在庫、予算、財務情報を管理します。

それぞれのプラットフォームには固有の役割がありますが、どれか一つのシステムだけで建物全体の情報を完全に把握することはできません。

システムを置き換えるのではなく、データをつなぐ

BIMとファシリティマネジメントを統合する目的は、これらのシステムをBIMで置き換えることではありません。

その目的は、各システム間で情報を相互にやり取りできるようにし、あるシステムで行われた変更を、関連するシステム全体に適切に反映できるようにすることです。

これらのシステムは、それぞれ独立して動作するのではなく、クラウドベースの統合プラットフォームを介して相互に接続されます。

クラウドプラットフォームが信頼できる一元的な情報基盤となる

クラウドプラットフォームは、接続された各システム間で情報を連携・同期するための統合ハブとして機能します。保守作業が完了したとき、設備が交換されたとき、点検記録が更新されたとき、あるいはセンサーデータに変化があったときには、最新の情報を維持管理BIMモデルを含む必要な接続アプリケーションに共有・反映できます。

複数のアプリケーションをそれぞれ手作業で更新する代わりに、クラウドプラットフォームを介して、BIM、資産データベース、ファシリティマネジメントシステム、その他の運用プラットフォームを継続的に連携・同期させることができます。

これにより、信頼できる一元的な情報基盤、いわゆるSingle Source of Truthを構築することができ、保守担当者、施設管理者、建物所有者、その他の関係者が、施設のライフサイクル全体を通じて、共通の正確かつ最新の建物情報を利用して業務を行えるようになります。

BIMの真の価値は引き渡し後から始まる

BIMモデルの完成は、デジタル活用の終着点ではなく、むしろ始まりです。設計・施工段階では、BIMは関係者間の連携向上やプロジェクト遂行の効率化に活用されますが、建物のライフサイクルコストや保守活動の大部分が発生するのは運用段階です。

BIMの真の価値は、建物とともに継続的に更新・進化していくことで発揮されます。維持管理BIMをクラウドベースのファシリティマネジメントシステムと統合することで、設備の保守、交換、更新が行われた場合でも、建物情報を常に最新の状態に維持できます。

その結果、BIMは単なる静的なプロジェクト成果物ではなく、迅速な保守対応、ライフサイクル全体を見据えた適切な意思決定、さらには将来的なデジタルツインやAIの活用を支える、信頼性の高いデジタル資産へと変わります。

次のステップ:相互に連携するBIMエコシステムの構築

BIMとファシリティマネジメントの統合を成功させるには、単にソフトウェアプラットフォーム同士を接続するだけでは不十分です。施設のライフサイクル全体を通じて、建物情報が適切に構造化・維持・同期される、確かなデジタル基盤が必要となります。

維持管理に対応したBIMモデル、標準化された資産データ、信頼性の高いシステム連携が整っていなければ、高度なファシリティマネジメントプラットフォームを導入しても、情報の分断やデータの不整合といった課題が残る可能性があります。

相互に連携するBIMエコシステムを構築するということは、BIMをはじめ、CMMS、CAFM、ERP、IoTに至るまで、各システム間で正確な情報をシームレスにやり取りできる環境を整えることを意味します。

Harmony ATは、BIMの専門知識、データ管理、システム連携サービスを組み合わせることで、企業や組織がこうしたデジタル基盤を構築できるよう支援しています。

維持管理BIMモデリング

効果的な維持管理戦略は、施工だけではなく、運用段階での活用を前提として構築されたBIMモデルから始まります。

Harmony ATでは、点検、予防保全、資産管理、将来の改修に活用できるよう、空間、設備、建物資産を体系的に整理した、維持管理に対応したBIMモデルを構築します。

これにより、建物の運用ライフサイクル全体を通じて継続的に価値を発揮するデジタルモデルを実現できます。

BIMデータの構造化

システム連携を成功させるうえで、一貫性のあるデータは不可欠です。

Harmony ATでは、設備識別子、分類、パラメータ、メタデータを含む資産情報を構造化・標準化し、複数のファシリティマネジメントプラットフォーム間で利用・連携しやすい形に整備します。

適切に整理されたデータは、手作業による処理を削減し、データ品質を向上させるとともに、システム間で信頼性の高い情報交換を可能にします。

BIM連携サービス

相互に連携するエコシステムは、BIMと各種運用プラットフォームの間で情報を継続的かつ自動的に連携させることで構築されます。

Harmony ATでは、APIやクラウド技術を活用し、BIMとCMMS、CAFM、プロパティマネジメントシステム、ERPプラットフォーム、IoTソリューションを接続する、セキュリティに配慮した連携ソリューションを開発します。

これらのシステム間で資産情報、保守記録、運用データを同期することにより、企業や組織は、建物情報を一貫性のある最新の状態に維持できます。これにより、より効率的なファシリティマネジメントを実現するとともに、長期的なデジタルトランスフォーメーションを支える基盤を構築できます。

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